人口安定化の方法

単純に考えると発展途上国の経済発展を邪魔することによって人口安定化を達成できるような気がするが、いうまでもなく、このような方法は現在では非倫理的であり、実現不可能であろう。また、出生率を制限するわけであるから、当然、優秀な遺伝子を残そうとする優生学的考えにつながりやすい。優生学も、過去のナチスドイツの例を出すまでもなく、現在では非常に非倫理的であり、許されるものではないだろう。

いちいち「現在では」と断っている理由は、例えば、過去の欧米の大学では、優生学が専門の教授が優生学について研究していた。また、アヘン戦争などに見られるように、ヨーロッパの強国はアジアやアフリカからの搾取で富を肥やしていたし、アメリカは自らの繁栄のためにアフリカから大量の黒人奴隷を連れてきて労働力とした。そういったことが、何の問題もなく行われていたということは、その当時はそれが倫理的に正しかったということであろう。私は別に現在の倫理の判断基準を否定するわけではないが、このように、倫理の判断基準は時代時代で変るものであるということを認識しておくのは必要であろう。

さて、倫理的な人口安定化の方法を考えるために、まず、人口増加のメカニズムを見てみよう。当たり前だが、人口は、死亡率を出生率が上回ることにより増加する。死亡率は、栄養の改善・医療サービスの充実等により、社会が豊かになると低下する。ただし、下がり続けるわけではなく、あるところから微増に転じる。これは、高齢化や生活習慣病によるものであろう。出生率は、社会が豊かになってもすぐには低下しない。出生率と死亡率の差の分、人口が増加する。さらに社会が豊かになると、農業の機械化、年金制度の充実、女性の社会進出、核家族化、教育経費の増加等により、出生率は低下する。出生率と死亡率が交差・逆転すると人口は減少に転じる。日本では2005年から人口が減少に転じ、たとえばメキシコでは2050年から人口が減少すると予想されている。

したがって、倫理的な人口安定化の方法の1つとして、発展途上国に経済的援助をして国を豊かにし、出生率の減少を加速するという方法が考えられる。これはすでにODAで行われているが、特に、女性の教育を重点的に支援するのがいいと思われる。女性が社会進出すると出生率が減少することは、調査で明らかになっている。また、経済発展による公害やエネルギー消費増加を抑えるには、世界一の日本の技術を有償供与することが有効であろう。ただし、これで全てOKというわけではなく、マルサスやドーキンスによるこういった援助は逆効果という指摘も考慮し、さらに検討する必要があることは重々承知している。

この他にも対症療法ではあるが短期的に効果を挙げるためには、コンドームやピルの無料配布が効果的であり、タイで1960年に3%であった人口増加率を現在の0.5%に下げた実績がある。中国の一人っ子政策は世界の人口が現在並に抑えられていることに大変大きく貢献しているが、四川大地震で一人っ子を失った若くない夫婦が子作りに励んでいるというような報道に接すると非人道的と感じられる。そのかわりに、国連主導で二人っ子政策を取れないものかと思う。IPCCを廃止してIPPS (Intergovernmental Panel on Population Stabilization)でも作って、二人っ子政策を取れば、人口は速やかに安定化可能であろう。

以下に変り種の方法をいくつか紹介する。まず、人口安定化の代わりに人類を小人化する方法について述べる。これを口にするとよく笑われるが、遺伝子を操作するのである。といっても、ハイテクで遺伝子を組み替えたりはしない。人間がチワワやポニーを作ったと同じ方法を用いる。例えば、まず身長170 cm以上の人間が子供を作ることを禁止する。しばらくして、身長170 cm以上の人間が少なくなってきたら、身長制限を160 cmとする。どこまで小人化できるのかはわからないが、これを繰り返せば、人間は小人化し、消費するエネルギーやスペースも少なくてよくなる。小人化すると比表面積が大きくなり、放熱が良くなるので温暖化にも適応できる(逆に言うと寒さに弱くなるので来るべき氷期に向かっては不利である)。もちろんこれは非倫理的であるし、仮に、日本がこの政策を実施したら戦闘能力が落ち、実施しなかった他国に容易に征服されてしまうという危険がある。実際にこんな政策が施行される可能性は全くないと思うが、人間を小人化することが技術的に何の問題もなく可能であるということを知っておくのは悪いことではないと思われる。もちろん同様の方法で巨人化することも可能であり、その程度のことはおそらく東ドイツのスポーツ選手育成などでは普通に行われていたのではないかと思われる。

類似の方法で平均寿命を操作することもできる。これは、ドーキンスの利己的な遺伝子に多少自信なさげに書いてあったものであるが、子供を作る年齢を制限する。たとえば、子供は30歳以上で作ることと法律で決めると、30歳未満で死亡する致死的遺伝子は淘汰される。徐々に年齢制限を引き上げると平均寿命は上がると予想される。もちろん限界はあると思うし、それが何歳かはわからない。これの逆をやると平均寿命は下がる。ただし、これは、世代交代の速さに関係するだけで人口には関係ない。実は、この現象は既に現れているのではないかと思う。先進国の平均寿命が長いのは、高度な医療によるものだけではなく、女性の社会進出による晩婚・初産の遅さであり、発展途上国の平均寿命が短いのは、初産が速いからではないだろうか。なお、この方法も明らかに優生学の応用であり、現在では非倫理的と判断されよう。

最後に、同性愛を奨励するという方法も効果的であろう。現在では、同性愛を認めないほうが非人道的となっているような気がする。遺伝子は不満だろうが。

地球外惑星へ移住する、あるいは、今のような体を持たない存在になるという方法も可能性としては否定できない。人間は今も遺伝子とミームにより進化しており、たとえば、100年前の人間が思いもつかない技術が現在実用化されているように、100年後には間違いなく我々の思いもつかない技術が開発されているからである。200万年後の人類は今の人類の化石(大噴火で火山灰の下敷きになった人など)を見て「サルと見分けがつかない」といって悩むと信じている。